高知能者のコミュニケーショントラブル2: 人間は自閉的知能を持ったサルである  Kindle版

人間は自閉的知能を持ったサルである!

自閉症的な人々は極めて高い集中力や視覚優位の性質を持ち、「分析的思考力」「論理的推論」「パターン認識」「芸術的才能」に溢れている。「アスペルガー症候群」の語源となったオーストリアの医師ハンス・アスペルガーはそのことに気付き、それらの素質・技能・態度・能力をまとめて「自閉的知能」と命名して「自閉症者が人類の歴史の中で果たした貢献は正当に評価されてこなかった」と主張した。

それに賛同する研究者は近年になって増え、ニューロダイバーシティ(神経学的多様性)という考え方が広まっている。発達障害などは神経学的な多様性でしかなく、治療できるものでもなければ障害でもない。普通の人(定型発達者)とは違った能力を社会の中でどう生かすかを考えるべきという考え方である。企業や政府でも自閉者の異能を活用する動きが活発化している。

こうして考えると、「そもそも人類は自閉的知能が高すぎて群れから追い出されたか、自分から出て行ったチンパンジーではないのか?」と思えてくる。自閉的な人々がちょいちょいと袖を引っ張るように科学技術や芸術の発展を促したことによって、人類は長い年月の間に他の野生動物とは全く違った生活をするようになったと考えるからだ。

現代文明では有利に見える自閉的な性質も、強すぎると他の発達障害・精神障害・身体疾患など併存疾患のリスクが高まってしまう。それが良い具合にブレンドされると良いが、「神の配剤」が狂ってしまうと本人や家族の苦労が絶えない。それでも我々は多様性を受け入れ、共に未来を切り開くべきであろう。